サクサクのパイ生地の中に、甘酸っぱいリンゴの甘煮がたっぷり詰まったアップルパイ。誰もが知っている人気のおやつで、ケーキ屋さんのショーウインドーだけでなく、市販の菓子パンとしても非常にポピュラーです。
古くは中世のイギリスやオランダで親しまれていた食べ物でしたが、19世紀に清教徒たちによってアメリカに伝えられたそうです。もちろんパイに使うリンゴ自体も、ヨーロッパからアメリカに渡って来ました。「アップルパイのようにアメリカ的だ ('As American as apple pie') 」という慣用句があるほど、アメリカを代表するお菓子の一つです。
一般的にイメージするアップルパイとは、繊細な層が美しいサクサクのパイ生地のものでしょうか。表面は網目状のデザインだったり、リンゴの葉をかたどったミニミニパイが乗っていたり、薄切りリンゴが整然と並んでいたり…。それらは日本の洋菓子店に多く見られるスタイルで、実は世界各地のアップルパイは、それらとはずいぶん様子が違うものも多いのです。例えばイギリスでは、タルト生地のようなクリスピーの中にリンゴを詰め、上からふたのようにかぶせて焼くことが多いとか。フランスのアルザス地方には、カスタードクリームをリンゴの隙間に流し込んで焼くというレシピがあるそうです。また、丸ごと一個のリンゴの甘煮をそのままの形で生かしてパイに包んで焼くという、世界でも珍しいスタイルのアップルパイが、青森など国内のリンゴ産地などで作られているのだそうです。
日本人にとっての味噌汁のように、アップルパイはアメリカ人にとってのおふくろの味なんだそう。
ならば、ぜひホームメードにも挑戦してみたいと思う方も少なくないはず。
手作りする場合、手間のかかるパイ生地は市販の冷凍パイシートを使えば簡単。
リンゴの甘煮を作る時は、品種選びがポイントです。アメリカに近い味を目指すなら、アメリカ原産の「紅玉」が良いでしょう。深い紅色と果汁の多さ、それに酸味の強い引き締まった果肉が特徴です。加熱しても煮崩れしない点もアップルパイ向きです。紅玉が手に入らないときは、サンふじやジョナゴールドなどでも美味しく出来上がります。
酸味が紅玉に比べて弱いので、レモン果汁を多めに加えるとバランスが良くなります。もちろん甘いのが好きな人はレモンなしでOK。リンゴが豊富に出回る季節に、いろんな品種で味を試し、自分好みのアップルパイを作る…まさに、アメリカのお母さんたちのように、オリジナルの味を研究してみるのも楽しそうです。